イノアブログ

負ける建築

 もうだいぶ前のことになってしまった。NHK『プロフェッショナルの流儀』に出てきた建築家、名前も忘れてしまったが、くまさんみたいな風貌の人だった。

「負ける建築」と題されていたが、これはどういう意味か?と興味津々・・。何に負けるのか?
つまり、すべてを受け入れるということだった。自分の我を通して、自己満足でやったものは、世の人に評価されず、かえって批判され受け入れられない。若い頃に創った建築でそれを実感した彼は、その後、いかに周りと調和するか、施主の意見を受け入れるかに全力を傾ける。周りと調和し、施主の言うことを受け入れることは、ある意味自分の意見が負けること。これを負けと称して、そこに出てきた様々な条件をすべて受け入れ、それは往々にして困難を伴うのだが、だからこそ最後に出来上がったものは、練り上げられたアイディアの結集となり、素晴らしいものが出来上がる。なあるほど!!又ひとつ、人生の極意を得たり!!

条件があればあるほど、困難さが増す。しかし、それがばねとなり、さらに素晴らしいアイディアが浮かぶ。何も困難が無ければ、考えも通り一遍のものしか生まれず、進歩は無い。

この極意を実践するためには、スーパー柔軟な脳が必要。これしかないと決めてかかると、それ以上のものは出てこない。これがだめならあれ、あれがだめならそっち・・と言う具合に、心を柔軟にしていると、次々と、しかもさらによいアイディアが出てくるものだ。これは、人生を楽しくする。次々と奥の手が出てくるようになると、悲壮感が無くなり、明るくなる。取り越し苦労のような恐れも無くなる。いったん道がなくなったように見えても、又道が出てきて、何とでもなるのだから。何も無いよりうんと楽しい。さらなるアイディアがふと浮かんだとき、ニマッとなって、ウキウキする。