加齢 1
先日NHKのドキュメンタリー番組(再放送、以前も見たことのある番組だった)に出てきたおばあさん。92歳?だったか、とにかく90うん歳。幼い頃は学校へも行けず、したがって字もあまり書けなかったその人が、77歳から書道を始め、今ではとても芸術的な感動を呼ぶ書を書いていた。その書や絵は、とても力強く、見ていてほっとするような安らぎが感じられ、土のぬくもりがある傑作ばかり。練習などはせず、いきなり本番。墨を丁寧にすって心を落ち着かせ、しっかりと自己を表現する。長く生きた人の生命力と、生きる事の素晴らしさを感じさせてくれる人だった。
東京の山手線に乗ってきたおばあさん。いかにも東京育ちと言うような初老の婦人二人と話しながら入ってきた。そのおばあさんは、聞こえてくる話によると栃木から初めて東京に出てきたらしく、腰はかなり曲がって乳母車を押している。初老の東京婦人と土の匂いのするおばあさんは、通路を挟んで話をするので自然と声は大きくなり車内中に聞こえていただろう。おばあさんが降りる駅とか色々質問をすると、婦人たちは愛想良く丁寧に返事をしていた。実はそのおばあさんには、中学生の孫(男の子)が一緒だった。私はどうしてこういう組み合わせの二人がどちらの用事で東京に出てきたのか・・・?と不思議だった。その子のお母さんかお父さん、つまりおばあさんの子供はどうしても仕事が休めなかったのだろうか・・とか連想はふくらむ。その孫は、ちっともおばあさんを助けようとはしない。荷物も手伝わないし、話もしない。降りる時、東京婦人がみかねて、「お兄ちゃん、荷物手伝ってあげなきゃ」と苦言を呈したが知らん顔だった。 つづく